本当は怖い!様々な合併症のリスクが高まる糖尿病

糖尿病とはどんな病気?

血糖値を下げるホルモンである「インスリン」がうまく効かなくなり、血糖値が高くなる病気です。生活習慣と遺伝(体質)の兼ね合いで、誰にも起こりうる病気です。特に高齢化により筋肉や臓器が弱わり、糖の処理機能が低下することで発症する方が増えてきています。基本的に症状が出ることは少なく、ほとんどの方は症状がないまま進行してしまいます。そこが糖尿病の怖い所です。

「症状が出ないのに怖い」といいますと?

怖いのは「合併症」です。糖尿病になると、様々な合併症を起こすリスクが高まります。合併症は大きく、「細小血管障害」と「大血管障害」に分けられます。「細小血管障害」は「目」と「神経」と「腎臓」に影響を及ぼすものです。目は進行すると失明し、神経障害がひどくなれば足の壊疽を招き、腎臓を患って「透析」を受けられる方もいます。「大血管障害」は脳梗塞心筋梗塞を引きおこす可能性があるものです。最近の研究では、糖尿病はいくつかのがんとも関係性があることが分かってきました。

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普段の生活でできる予防は?

一言で言えば糖尿病は「生活習慣病」ですので、規則正しい生活が一番です。「バランスのとれた食事」「適度な運動」「十分な睡眠」がポイントです。最終的には体重が最も関与しますので、肥満の方は痩せなければなりません。とは言っても大幅な減量が必要なのではなく、まずは体重の5%程度の減量を目指しましょう。また睡眠不足は過食に繋がるので、くれぐれも気をつけて下さい。

最後に一言

糖尿病は受診率の低さが問題となっています。いわゆる「未治療糖尿病」の方がまだまだいます。日本全国で糖尿病の方は約1,000万人、その中の7割の方は定期的に受診していますが、残り3割の方は受診していないといわれています。その方たちがこのまま治療しなければ、合併症を引き起こし、命の危機にさらされることにもなりかねません。なぜ糖尿病を治療しないといけないかというと、「合併症を予防するため」です。まずは検査からはじめ、糖尿病と分かったら適切な治療を受けられることをお勧めします。

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尾西記念病院で毎週水曜日AM8:40から「健康体操」実施中!!

杏嶺会グループの尾西記念病院では、毎週水曜日のAM8:40~「健康体操」を行っています。その中で月に一度、「明るく、楽しく、健康に」をモットーに、山村医師と職員が七福神に扮し肩甲骨体操を行っています。

肩甲骨の周辺には“褐色脂肪細胞”があり、肩甲骨を動かすことにより、“脂肪燃焼”と“血流”を促します。結果、肩こりの改善やダイエットに効果があるといわれています。

この日も100名をこえる方が参加され、座った状態でもたくさん汗をかいておられました。予約不要でどなたでもご参加いただけます。是非お越しください。

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診療部長対談 “ストロークチーム発足 脳卒中に対する24時間365日体制”

宮嵜章宏(脳神経外科部長) × 山口啓二(神経内科部長)

2016年8月より、一宮西病院ではストローク脳卒中)チームを立ち上げました。西尾張エリアは人口規模の割に脳卒中診療がまだまだ不足している・・・という思いから発足したこの「ストロークチーム」について、脳神経外科・宮嵜部長と、神経内科・山口部長にお話を聞きました。

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ストローク脳卒中)チームの体制と特長

(山口)脳卒中チームといえば、脳神経外科医だけで構成されている病院がほとんどですが、当チームは、あえて脳神経外科神経内科の両科で構成しています。脳神経外科は手術をするが、神経内科は手術をしません。例えば、くも膜下出血とかは手術が必要となる疾患ですが、脳梗塞脳神経外科でないと診療できないかというと、神経内科でも診療できるのです。それは手術にならないケースが少なくないからです。確かに脳神経外科医はあらゆる病変を診療できますが、実は手術を必要としない脳梗塞は、データ上4分の3程度もあります。また、脳神経外科は手術のスキルを磨くために、かなりのストレスと体力を強いられます。医療上の安全からも見ても、手術の必要がないものは内科医が診療して、外科医は高度な治療に専念した方が機能的だと思います。術前術後の管理においても、脳神経外科は緊急オペなどで、病棟をこまめに回ることが難しい時もあります。そういう面では、手術のない神経内科が、こまめに病棟の患者さんをチェックすることで、病状の変化に早期に気づき、悪化させないこともできます。こういった経緯で、神経内科脳卒中チームに組み込まれているわけです。

(宮嵜)神経内科がチームに入ることで、診断能力は格段にパワーアップしました。例えば、脳卒中といってもすべてが典型的な症状なわけではないので、最初に「脳卒中」と診断できるだけの知識とスキルが必要です。その点、神経内科医はいわゆる一般的な診察はもちろん、神経医学的チェック、画像の見方、エコーなどのスキルが高いです。さらには、再発予防などは神経内科医がプロフェッショナルです。また当チームでは、神経内科は外科的治療になったら「もうおまかせ」という風になるのではなくて、一緒にその治療に入ります。これによる最大のメリットは、どういう患者さんが治療適応になっているか、どういう予後なるかということを一緒に肌で感じることができるのです。それによって、内科医と外科医でディスカッションし、同じベクトルでより良い医療の提供を目指すことができます。外科的治療と内科的治療、そのどちらがメインの治療というわけではなくて、どちらも補完しあってはじめて完全な治療だと考えています。

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24時間365日体制について

(宮嵜)脳神経外科神経内科の医師を十分に確保したことにより、脳卒中に対して24時間365日迅速な対応を実現できるようになりました。でも実は、医師だけ揃っていても24時間365日、脳卒中を受入れることはできません。例えば、MRI検査ひとつとっても24時間365日撮影できない病院はまだまだあるはずです。それは放射線技師さんの人数が足りないなど理由は様々です。もちろん当院ではMRIもCTも24時間365日対応しています。そういう意味では、脳卒中チームを支えるあらゆるスタッフが十分に確保できているといえます。また当院には、開頭手術に加え、近年注目されている「脳血管内治療」を提供できる医師が複数名揃っています。それに加えて神経内科の全面的バックアップにより、予定されていた手術と平行しつつ、緊急の手術や脳血管内治療にも随時対応できるようになったのも、24時間365日体制を実現できた大きな理由です。

最新治療の血管内治療「血栓回収療法」

(宮嵜)今一番注目されている脳血管内治療法として「血栓回収治療法」があります。世界的な論文でこの治療法の有効性がはっきりと示されています。既にアメリカでは「グレードA」といって第一選択しなければならない治療としてガイドラインに定められています。当院の脳神経外科も、血管内治療の診療体制を拡充しています。特に脳梗塞では、今までなら手足の麻痺が残っていたような症例も、「血栓回収療法」で、後遺症なく歩いて帰るというケースも増えてきました。ただ、「血栓回収療法」を十分に提供できている地域はまだまだ少ないのが現状です。当院では、血管内治療ができる専門医が3名在籍しています。血管内治療医が複数人いる病院は全国にもそれ程多くないと思います。将来的には他院ともっともっと連携を図り、地域全体を包括する脳血管治療の提供ができたらいいですね。

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脳卒中に対し迅速な対応を実現するには

(山口)この地域は脳卒中の診療体制は整っている方だとは思いますが、脳卒中の専門家がファーストタッチできてないケースは多いのではないかと思います。当院でも、脳卒中チームができるまでは、特に通常勤務帯以外では非専門医が救急外来で初療を行う場合が多く、非典型例では脳卒中に気づくのが難しいケースが時にありました。また、診断できたとしても診断までのスピードは確実に落ちますし、専門医への連絡はCTやMRIで確認が終わってからでしたので、どうしても治療の開始は遅れました。脳卒中は、治療が遅れれば遅れるほど、患者さんの脳細胞がどんどん失われ、tPAや血栓回収療法のチャンスが減るばかりでなく、治療成績も落ちてしまいます。だから脳卒中の診療をするためには、24時間365日専門家が院内に常駐し、脳卒中救急のファーストタッチを行う必要があります。また、万一、非専門医が診察した場合でも、いつでも気楽にコンサルトしてもらえるよう人間関係の構築に努め、即座にサポートできる体制でないと十分とはいえません。

(宮嵜)そうですね。我々脳卒中の専門家が常時携帯しているPHSに、救急隊から直接連絡が入る体制を整えたのは大きいですね。そうすることで、救急隊から連絡を受けた時点で、これは脳梗塞ではないかと思われる症例が増えてきました。そうなると、救急車が到着する前にある程度予測をして行動できます。例えばこういうケースがありました。救急隊から「60代で手足の麻痺があり」と神経内科医が電話を受けた時点で、「血栓回収療法」になるかもしれないと、MRI検査ができるように準備、患者さんが運ばれて迅速にMRIを撮影すると、予想どおり血管が詰まっている、すぐに血管内治療の専門医を呼んで、MRIの画像を再度確認し脳梗塞が確定、事前にカテーテル室にも連絡しているので、カテーテルをする準備完了、あとは血の固まりを溶かすお薬を投与しながら、神経内科医は家族に説明に入り、脳神経外科医はカテーテル室でカテーテル治療に専念します。ファーストタッチ脳卒中チームがPHSをとることによって、常に一歩先へ先へと治療を進めていくことができます。

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神経難病の治療用で導入したロボットスーツ・HALの可能性

(山口)脳卒中はひとたび障害が完成してしまうと、治療で元に戻すことが難しいのが現状です。脳卒中になった方に対しては、障害が完成する前の急性期治療に力を入れておりますが、残念ながら障害が完成した患者さんに対しては、再発や進行を防ぐための予防や全身管理に全力を尽くしてきました。そして少しでも機能を回復させるため、入院直後から365日体制でリハビリを行ってきましたが、ロボットスーツ(HAL)を導入したことで、従来のリハビリにはない回復効果が期待できる治療を提供できる可能性がでてきました。神経難病の患者さんにHAL治療を用いたところ歩行の改善が証明され、平成28年4月から8つの神経難病の歩行機能の改善に、保険適応が認められました。我々の施設では平成28年10月から医療用HALを導入しましたが、実際に神経難病の患者さんに試したところ、明らかな歩行機能の改善がみられ、HALの有効性を実感しました。脳卒中に対してのHAL治療は現時点では保険適用はありませんが、脳卒中後遺症に有効性があるという報告もあり、実際に我々の症例でも試してみたところ、やはり歩行障害の回復に有用であるという感触が得られました。実は医療用HALの使用には、資格が認められた医師の判断が条件ですが、当院では私をはじめ資格を有する医師が数名おります。そしてHAL治療の資格がある医師が使用を許可すれば、保険適用外の症例であっても、保険算定ができない(患者さんに請求できない)だけで、HALを使用することは可能なのです。私は、HALを脳卒中の患者さんに用いれば、これまでのリハビリにはない機能回復効果が得られる可能性があると考えております。当院では2016年11月からHALが歩行障害のみられる急性期脳卒中患者さんに安全に使用できるかを検証する研究を、UMIN(大学病院医療情報ネットワーク)に登録したうえで開始しております。安全性が確認できたら、通常のリハビリと比較して本当にHAL治療が有効であるかを、急性期、亜急性期、回復期それぞれのステージで検証したいと考えております。もしそれが有効であると科学的に証明できれば、要介護度の軽減や入院期間の短縮にも繋がるかも知れません。要介護の最大の原因は脳卒中です。脳卒中を診療する医師として2025年問題に対する責任を感じており、その対策にもなりうる治療として、早急に検証しなければという思いがありました。また日本発の医療技術として、世界に輸出できれば国力のアップにも繋げていけるのではないかと期待を寄せています。

(宮嵜)当法人の特徴として、急性期病院の他、地域の回復期リハビリ病院としても役割を果たしています。関連施設も含めてリハビリのセラピストが総勢で約300名います。ここまでリハビリスタッフが多い法人は全国でも例がないと思います。それを生かし、治療当日の超急性期、翌日以降の急性期、その後の回復期、在宅まで円滑にリハビリテーションを行える体制をとっています。

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最後にメッセージ

(宮嵜・山口)脳血管内治療やロボットスーツなど、先進的な治療をいち早く導入したり、24時間365日脳卒中に対し迅速な対応を実現するなど、当院のスタッフは「時を問わず、労をいとわず」ますます熱意を持って治療に臨んでいきます。これからもチーム医療で、地域の脳卒中医療を担っていきたいと思っております。

放射線診断科・木口医師が北米放射線学会より表彰されました

放射線診断科 医長、木口貴雄医師が、RSNA(北米放射線学会)発行の医学誌“Radiology”が主催する画像診断コンテスト「Diagnosis Please」において年間最多正解数を獲得し、Diagnosis Please AwardでWinnerとして表彰されました。当院の放射線診断が世界トップレベルであることを示すものでございます。

【概要】

■受賞者 : 木口貴雄.
■授与機関 : RSNA2016 2016 Diagnosis Please Award. 
■年月 : 2016年12月.

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画像とITの医療情報ポータルサイト「インナビネット」でも紹介されています。

警報レベルを超えた大流行!ノロウイルス感染症について

今、全国で猛威を振るう感染性胃腸炎。予防や感染経路、罹ったときの対応などの“正しい知識”を、一宮西病院・感染対策室の長瀬仁師長に伺いました。

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流行状況は?

ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎が猛威を振るっています。国立感染症研究所が12月27日に公表した全国の1医療機関当たりの患者数は、「警報レベル」の20人を超え、現在の集計法になった1999年以降では2006年に次ぐ大流行になっています。遺伝子が変化したタイプ(変異型)の広がりが一因とされています。

感染するパターンは?

①学校や職場などで汚染した環境(共有する物、特にトイレ)に触れる

②手洗いが不十分である

③その手でご飯を食べる

以上のように、集団や家庭などの生活している環境においてノロウイルスが発生した場合、気づかない内にノロウイルスに感染した人のふん便や吐ぶつから二次感染します。「ヒト→ヒト」や「モノ→ヒト」からの接触感染や飛沫感染を予防する必要があります。

予防は手洗い!

感染予防は、手指に付着しているノロウイルスを減らすことが最も有効な方法です。 調理を行う前、食事の前、トイレに行った後、下痢等の患者の汚物処理やオムツ交換等を行った後(手袋をして直接触れないようにしていても)には必ず手を洗ってください。常に爪を短く切って、指輪等をはずし、石けんを十分泡立てて洗います。すすぎは温水による流水で十分に行い、清潔なタオル(共有はしない)又はペーパータオルで拭きます。石けん自体にはノロウイルスを直接失活化する効果はありませんが、手の脂肪等の汚れを落とすことにより、ウイルスを手指から剥がれやすくする効果があります。

もし感染したら?

主症状は嘔気、嘔吐及び下痢です。発熱はないわけではありませんが、その頻度は低く、あまり高熱とはならないことが一般的です。小児では嘔吐が多く、成人では下痢が多いことも特徴の1つです。嘔吐・下痢は1日数回からひどい時には10回以上の時もあります。症状回復後でも1週間程度、長い場合は1か月に渡ってふん便中にウイルスが排泄されるといわれています。また、発病することなく無症状病原体保有者で終わる場合もあります。いずれにせよ、流行期間中は知らない間に感染源となってしまう場合がありますから、感染した人(疑いも含む)も石けんによる手洗いを徹底してください。

熱き働き人 臨床検査科科長 横山明孝(よこやまあきたか)

プロフェッショナル論~働く上でのこだわり~

私たち臨床検査技師という仕事をご存知でしょうか?欧米ではメディカルテクノロジストと称されメジャーですが、日本でもほとんどの病院に在籍し、医療には無くてはならない仕事でありながら、医師や看護師に比べ、業務内容の認知度はいまひとつです。しかし、一言で説明できない程の業務範囲を持ち、現代医療には欠かせない職種です。端的に説明すると、診断や治療効果を判断する為の情報を医師に提供する仕事で、その昔は内科医が行っていました。心電図や超音波検査を行う「生理検査」、血液検査を行う「検体検査」、細胞や組織の検査をする「病理検査」、感染症の検査をする「細菌検査」など、検査の種類は多種多様です。また、働くフィールドも「検査室」だけに留まらず「手術室」「カテーテル室」など広範囲にわたります。直接的あるいは間接的に、ほとんどの患者さまや医師に係わりますが、私たちは直接治療をする事はありません。しかし、我々一人一人の判断が患者さまの診断や治療に大きく影響しています。現在杏嶺会の臨床検査科は、医師1名、臨床検査技師41名、視能訓練士4名、アシスタント4名の50名で構成されています(2016年10月現在)。各々が患者さまの診断、治療に携わり完治を願っています。

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明日への挑戦~自らに課している要求~

常に思うことがあります。医師の専門性が進み、それぞれの病気に関しての治療効果は確実に上昇し、早期発見も出来るようになりました。われわれ臨床検査技師も、医師に準じて専門化することで成長してきました。しかし、臨床検査科の責任者としてそれだけでいいのか?私は生理学や血液学を中心に勉強し、他院で救急にも携わりました。また、研究や論文発表、スウェーデンでの欧州心臓病学会発表の経験もあります。今では大学での講師やセミナーでの講義も積極的に行っています。しかし、決して志は満たされず、まだまだ修業が足りないと思っています。臨床と研究の両立は無理だと揶揄される事もありますが、週末や睡眠を犠牲にしてでも、スペシャリストとジェネラリストの両方の道を極めたいと思っています。そして、勉強や経験した事のすべてを部下や学生に伝えたいと思っています。雨が地下水となり、時間をかけ清水として湧き出すかのごとく、次世代に受け継いだことのすべては、最終的には患者さまのメリットとなると確信しています。医師ほど目立ちませんが、病気を治したい気持ちは変わりません。

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理想の病院~こういう病院にしたい~

結論から言うと患者さまに選ばれる病院でありたいと思っています。病院は通常の会社とは少し違い、多くの専門店を持つショッピングモールのように思います。繁盛するショップが一店舗あれば継続的にお客さんが入るものでもなく、一店舗でも問題を起こせば自然に客足は遠のきます。病院で働く様々な国家資格を持った専門職から事務職、アシスタントに至るまで、そのすべてが医療スタッフだと考えています。少し難しい話になりますが、心電図は世界中で検査される簡単で有用な検査ですが、その原理や解釈は医学者、物理学者の間でも、心電図の持つ情報のごく一部しか使用されていないとも言われています。心臓が拍動する際、細胞レベルで非常に微弱な電位差を生じ、そのエネルギーが次の細胞、また次の細胞へ伝道される様子をベクトルの合力として捉えたのが心電図だと、私は考えています。ひとつの細胞のエネルギーは非常に微弱でも、集団で行えば、血液を指の先まで送り出すエネルギーを生み出します。しかもその活動は継続的で、哺乳類の寿命を心臓の拍動時間で割ってみると、大体一生に20億回収縮と拡張を繰り返すという学説があります。個々のスタッフのエネルギーは微力でも、プロ集団のベクトルが同じ方向であれば、必ず救える命は増えるはずです。

臨床検査科 科長 横山 明孝 (よこやま あきたか)

 

鳥インフルエンザ、その怖さと対処法

この地方でも連日ニュースで話題になっている「鳥インフルエンザ」。人がかかるインフルエンザとの違いは?人にも感染するの?今知りたい疑問を、一宮西病院・感染対策室の長瀬仁師長に伺いました。

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鳥インフルエンザウイルスとは何ですか?

簡単にいうと、鳥が感染するインフルエンザが鳥インフルエンザです。豚が感染するインフルエンザは豚インフルエンザです。人間に流行する亜型(NとかHとか)とは違いますが、鳥が感染するインフルエンザの亜型によっては、高病原性といってかなり毒性が強いものもあります。昨年、一昨年に中国で鳥インフルフェンザが流行った時は、鳥を仕事で扱っていた人に感染したようです。最近ではヒトにもうつるということが分かりつつあります。それが「ヒト-ヒト感染」といって、ヒトからヒトに感染することもあるので、インフルエンザに感染した鳥が発見されると、すごいニュースになるわけです。ヒトに感染するとウイルスが人間の体に順応し、毒性が強くなり重症化しやすいとも言われています。

どのような時に鳥からヒトに感染しますか?

従来、鳥インフルエンザウイルスは、ヒトへは感染しないと考えられていました。しかしながら世界的にみると、現在までにいくつかの感染事例が報告されています。基本的に簡単には感染しませんが、鳥の死骸や体液、糞尿からウィルスを大量に吸い込むと感染することもあります。

ヒトの鳥インフルエンザウイルス感染の予防法はありますか?

路上にわたり鳥などの死骸(大量に死んでいたら特に危険!)があったら、近づいたり触ったりしてはいけません。かわいそうですが土葬もやめてください。日本ではヒトに感染した例はありませんが、感染された鳥は全国で続々と見つかってきているので、まったく海の向こうの話しではないと思います。一番大事なのは、ヒトにも感染する可能性があるということを、まず認識することではないでしょうか。

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