熱き働き人 臨床検査科科長 横山明孝(よこやまあきたか)

プロフェッショナル論~働く上でのこだわり~

私たち臨床検査技師という仕事をご存知でしょうか?欧米ではメディカルテクノロジストと称されメジャーですが、日本でもほとんどの病院に在籍し、医療には無くてはならない仕事でありながら、医師や看護師に比べ、業務内容の認知度はいまひとつです。しかし、一言で説明できない程の業務範囲を持ち、現代医療には欠かせない職種です。端的に説明すると、診断や治療効果を判断する為の情報を医師に提供する仕事で、その昔は内科医が行っていました。心電図や超音波検査を行う「生理検査」、血液検査を行う「検体検査」、細胞や組織の検査をする「病理検査」、感染症の検査をする「細菌検査」など、検査の種類は多種多様です。また、働くフィールドも「検査室」だけに留まらず「手術室」「カテーテル室」など広範囲にわたります。直接的あるいは間接的に、ほとんどの患者さまや医師に係わりますが、私たちは直接治療をする事はありません。しかし、我々一人一人の判断が患者さまの診断や治療に大きく影響しています。現在杏嶺会の臨床検査科は、医師1名、臨床検査技師41名、視能訓練士4名、アシスタント4名の50名で構成されています(2016年10月現在)。各々が患者さまの診断、治療に携わり完治を願っています。

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明日への挑戦~自らに課している要求~

常に思うことがあります。医師の専門性が進み、それぞれの病気に関しての治療効果は確実に上昇し、早期発見も出来るようになりました。われわれ臨床検査技師も、医師に準じて専門化することで成長してきました。しかし、臨床検査科の責任者としてそれだけでいいのか?私は生理学や血液学を中心に勉強し、他院で救急にも携わりました。また、研究や論文発表、スウェーデンでの欧州心臓病学会発表の経験もあります。今では大学での講師やセミナーでの講義も積極的に行っています。しかし、決して志は満たされず、まだまだ修業が足りないと思っています。臨床と研究の両立は無理だと揶揄される事もありますが、週末や睡眠を犠牲にしてでも、スペシャリストとジェネラリストの両方の道を極めたいと思っています。そして、勉強や経験した事のすべてを部下や学生に伝えたいと思っています。雨が地下水となり、時間をかけ清水として湧き出すかのごとく、次世代に受け継いだことのすべては、最終的には患者さまのメリットとなると確信しています。医師ほど目立ちませんが、病気を治したい気持ちは変わりません。

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理想の病院~こういう病院にしたい~

結論から言うと患者さまに選ばれる病院でありたいと思っています。病院は通常の会社とは少し違い、多くの専門店を持つショッピングモールのように思います。繁盛するショップが一店舗あれば継続的にお客さんが入るものでもなく、一店舗でも問題を起こせば自然に客足は遠のきます。病院で働く様々な国家資格を持った専門職から事務職、アシスタントに至るまで、そのすべてが医療スタッフだと考えています。少し難しい話になりますが、心電図は世界中で検査される簡単で有用な検査ですが、その原理や解釈は医学者、物理学者の間でも、心電図の持つ情報のごく一部しか使用されていないとも言われています。心臓が拍動する際、細胞レベルで非常に微弱な電位差を生じ、そのエネルギーが次の細胞、また次の細胞へ伝道される様子をベクトルの合力として捉えたのが心電図だと、私は考えています。ひとつの細胞のエネルギーは非常に微弱でも、集団で行えば、血液を指の先まで送り出すエネルギーを生み出します。しかもその活動は継続的で、哺乳類の寿命を心臓の拍動時間で割ってみると、大体一生に20億回収縮と拡張を繰り返すという学説があります。個々のスタッフのエネルギーは微力でも、プロ集団のベクトルが同じ方向であれば、必ず救える命は増えるはずです。

臨床検査科 科長 横山 明孝 (よこやま あきたか)