熱き働き人 麻酔科・集中治療部 医長 野手英明(のてひであき)

プロフェッショナル論~働く上でのこだわり~

空港で飛行機を見るのが好きだ。各機はフライトに備えて入念な整備を受けている。どんなリスクも想定され、具体的な対策・対処法がとられている。麻酔はよく飛行機の離着陸に例えられる。準備、麻酔導入、麻酔維持、抜管という一連の流れが似ているからだ。飛行機同様、各手順での失敗は墜落を意味し、生命の危機や合併症につながる。そのため麻酔自体に求められる安全性は基本的に100%である。これは昔も今も、これからも変わらない。一方で高度な技術を要する低侵襲手術、高齢患者の長時間大手術などリスクの高い症例は年々増加している。こうした新しい治療や侵襲の高い手術は「安全」という輪とつながることで両輪となり、はじめて動き始める。当院では非常に高度な技術を持たれた先生が多く、手術の質は折り紙つきである。だから私は麻酔および集中治療で提供しうる安全性にこだわる。そしてこれを達成するにはチーム医療に尽きる。安全を強固なものにする点で、医師も看護師もMEもリハビリなど職種は関係ない。一人一人が必要不可欠な役割を持った安全な“フライト”を目指す仲間である。どんな些細なリスク、出来事も雑談のようにフランクに話しあい、共有できるような素敵な環境づくりを目指している。

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明日への挑戦~自らに課している要求~

後輩医師を含めたスタッフの“嗅覚”を育てること。ICUで患者をみていると「何かおかしい」とか「急変しそうな気がする」など明らかな根拠はないけれど“嫌な予感”を感じることがある。その感覚を“嗅覚”とするならば、教えるというよりは場数を踏むことで体得されるものと言った方が正確かもしれない。座学で得られるものではない。方法は一つ。たくさんの重症患者を診ること。そして患者さんがよくなっていく喜びを経験すること。患者さんをよくしようと試行錯誤して、愚直に根気よくやったことだけが自分の方法論になる。患者さんがよくなることはもちろんこの上なく嬉しい。それに加えて、それを見て嬉しそうにしている後輩やスタッフとの雰囲気がたまらなく好きだなと思う今日このごろである。

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理想の病院~こういう病院にしたい~

麻酔・集中治療を専門としているため重症患者や急変に強い病院にしたい。そういった状況でこそ病院の底力が試されると思っている。集中治療や麻酔は重症や急変患者さんの病気を治すわけではない。各科の先生方に根本治療をしていただいてはじめて治療は完成する。そのため日々重症患者、急変患者に対応する中で、根本治療のチャンスを作ること、そのタイミングを逸しないことを常に念頭に置いている。これを達成するにはやはりチーム医療に尽きる。幸い素晴らしい仲間に恵まれた。急変時に病棟やERでの処置、手術室での真夜中の緊急手術、ICUへの緊急入室。色々な場所で様々な職種の方と一緒に仕事をするが誰一人として嫌な顔をしない。このスピリットは病院の宝。急変はもちろんない方がいいが、残念ながらなくなることはない。病院全体がチームとして経験を積み、より高みを目指したい。

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麻酔科・集中治療部 医長 野手英明(のてひであき)