熱き働き人 栄養科科長・静脈経腸栄養学会認定NST専門療法士 山田宗範(やまだ むねのり)

プロフェッショナル論~働く上でのこだわり~

日本人の栄養状態は20%の人が“低栄養”(入院では40%)、30%が“過栄養”という現状です。管理栄養士は糖尿病や脂質異常症等の生活習慣病に直結する“過栄養”、一方で免疫能力低下や創治癒遅延、サルコペニア等を引き起こす“低栄養”の両者と対峙していかなければなりません。どちらの局面においても知識が重要であるという事は論を待たないですが、私が常に心掛けていることは、患者さまからニーズを「聴き」、期待以上の結果を出すということです。「聞く」という言葉は、単に音が耳に入ってきて聞こえるという意味で、“きく”姿勢が明確ではありません。「聴く」は字のごとく、耳+目、そこに心を添えてニーズを探りながら“きく”という意味で、いかに患者さまに納得していただける提案ができるかどうかは「聴く」が不可欠だと考えています。メディアの情報が氾濫している昨今、“○○が体に良い”とされると翌日スーパーでは品切れ状態となり、暫くすると元の静けさに戻るという光景をよく目にします。私たち管理栄養士は流行りに惑わされず、患者さまの背景・病態を把握し、腰を据えて熟考することで、その方にとって最適かつ特別な栄養療法を提案・実施していきます。そのためには国内外の論文を読み、常によりエビデンスの高い栄養療法を獲得する努力も怠りません。

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明日への挑戦~自らに課している要求~

入職当初、当院外科医の先生に「勉強代はケチるんじゃない。資格手当は自分を高めるために使いなさい。」と激励を頂きました。以来、光陰矢の如し約20年の月日が流れましたが、その頃から毎月専門書を購入し、学会・研究会へも積極的に参画することで研鑽を積んできました。従来、管理栄養士は献立を作成・調理し、たまに栄養指導するのが主業務でした。時代の変遷とともに、病院の管理栄養士は「栄養」と名の付くものは包括的にサポートする必要があるという流れになり、食事管理に加え、経腸栄養・静脈栄養にまで範囲が広がってきています。栄養サポートには栄養学に留まらず、付帯する病態の知識も得て専門性を高めていく必要があります。社団法人栄養士会も関連学会と協働で「癌病態栄養専門管理栄養士」、「腎臓病病態栄養専門管理栄養士」、「糖尿病病態栄養専門管理栄養士」、「摂食嚥下リハビリテーション専門管理栄養士」等の育成を始めました。管理栄養士もジェネラリストの中にもスペシャリストの資格を兼ね合わせた人材を育成し、組織力を高めて患者さま中心の医療へ貢献していきたいと考えております。

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理想の病院~こういう病院にしたい~

我が国は世界一の超高齢社会を迎えており、医療費適正化及び質の向上を目的とした“DPC”の影響で急性期病院の在院日数は短くなっています。この状況下、栄養管理も急性期病院のみで完結する事が困難な時もあります。当院が治療の根幹を成し、いかに慢性期病院や在宅等の後方施設と連携し、縦糸と横糸を紡ぐように、“シームレスな医療”を展開できるかが大事だと思います。“シームレスな医療”は当法人のどこにも負けない強みの1つだと確信しております。また、職員一人ひとりの接遇が患者さまに選ばれる魅力ある病院に繋がると思います。遇は“もてなす”の意、もてなすとは思いやりを持って行動する事。つまり接遇とは思いやりの心を込めて相手に接する事です。不安でいっぱいの患者さまが来院されたら温かい言葉をかける。廊下ですれ違う時は優しい表情で挨拶や会釈を交わす。そんな小さな思いやりの積み重ねが、再訪したいという気持ちに繋がる気がしてなりません。「こころ」や「おもい」のみでなく行動を伴った「心遣い」「思いやり」を前面に出し、患者さま満足度を高められるよう努力していきます。

栄養科科長・静脈経腸栄養学会認定NST専門療法士 山田宗範(やまだ むねのり)