平成30年度・臨床研修修了証授与式が執り行われました

平成30年度、臨床研修修了証授与式が執り行われました。

式には院長、卒後臨床研修センター長をはじめ、多くの医師、看護師、コメディカル、事務職員が列席しました。

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当院での2年間の初期研修を終えた9名の医師が、新たなるステージへ旅立ちます。先生方の今後益々の発展とご活躍をお祈りします。

◎一宮西病院 研修医募集サイトはこちらhttps://anzu.or.jp/ichinomiyanishi/resident/index.html

CBCラジオ「健康のつボ~脳卒中について②~」 第5回(平成31年3月7日放送内容)

CBCラジオ「健康のつボ~脳卒中について②~」第5回(平成31年3月7放送内容) 
出演/つボイノリオさん(タレント)、小高直子さん(アナウンサー)、宮嵜章宏医師(一宮西病院 ストロークチーム・脳神経外科部長) 

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(小高)毎週この時間は「健康のつボ」です。日本人の死因の第3位となっている『脳卒中』について伺っています。ゲストは一宮西病院ストロークチーム・脳神経外科の部長、宮嵜章宏先生です。よろしくお願いします。

(宮嵜)よろしくお願いします。

(つボイ)やっぱり病気のことは気になる方が多いようでして、お便りもたくさんいただいております。尾張旭市の、ペンネーム『もっちゃん』という41歳の方ですが、『つボイさん、小高さん、先生、いつもありがとうございます。脳卒中に関して教えてください。20年前に亡くなった祖父も、去年亡くなった父方のいとこも、原因は「くも膜下出血」でした。こうしたくも膜下出血や脳の血管の病気は遺伝するものなんでしょうか?私は中年と呼ばれる歳になってきましたが、ちょっと心配しているところなんですが・・・。』というお便りでございます。

(小高)遺伝性があるのか、ですね。

(宮嵜)はい。くも膜下出血は、遺伝は普通はしないんですけれども、約1割ぐらいの方に家族性に起こる方がいらっしゃるんです。例えばご両親とかご兄弟がくも膜下出血で、ご自身もかかったという方がたまにいらっしゃいます。命に関わる病気ですので、もしもご家族の方でそういう傾向があるということであれば、ぜひ脳ドックを受けていただいて『動脈瘤』というくも膜下出血の原因なるものがあるかどうかを調べになることをお勧めします。一度受けていただいて問題が無ければ、よっぽどじゃなければそれで何か起こるというようなことにはならないので、安心できると思います。

(小高)そもそもこの「くも膜下出血」というのは何でしたっけ?

(宮嵜)まず脳は髄液という水の中に浮かんでいるような状態で、それによって守られているわけですが、その髄液を覆っている膜を「くも膜」といいます。そのくも膜の下にある血管が破れると、くも膜の下に血が充満してしまうんです。それによっても呼吸が止まってしまって、突然死んでしまう場合もあるというのがくも膜下出血の恐ろしいところですね。

(小高)発症したときの症状はどういうものですか?

(宮嵜)典型的には、後頭部をハンマーでガツンと殴られたような激しい頭痛が突然起こります。それだけではなくて、嘔吐や意識がなくなる場合もあります。そのまま突然死になってしまう恐れもある病気です。

(小高)そして病院に運ばれたときはどんな治療が行われるんですか?

(宮嵜)まずくも膜下出血かどうかを調べるためにCT検査をします。そこで出血があるということであれば、造影剤を使った検査で血管を調べて原因となっている動脈瘤を見つけ、緊急手術を行います。

(つボイ)先ほどの話に戻りますが、やっぱり脳ドックなどで自分の脳の状態をいつも把握しておくのが大切ということでしょうね。

(宮嵜)そうですね。特にお便りをくださった方のように、近しい方がくも膜下出血をされているなら、脳ドックの検査を受けられることをオススメします。

(つボイ)受けてなんでもないこともあるんですからね。

(宮嵜)もちろんそうですね。

(つボイ)なんにしても、ちゃんと管理をするというのが大切なことですね。

(小高)そうですね。ありがとうございました。一宮西病院の宮嵜章宏先生でした。皆さんも脳卒中や心臓病に関して専門家の先生に教えて欲しいことがあったら、このコーナーまでお寄せください。

(つボイ)質問お待ちいたしております。

(小高)「健康のつボ~脳卒中について~」でした。

 

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インドのドクターチームが、最新カテーテル治療の見学で一宮西病院を訪れました

近年、日本における循環器疾患治療の進歩は著しく、特にカテーテル治療の技術やテクノロジーの進歩には目を見張るものがあります。そのような中、13.4億の人口を抱えるインドの医療機関の先生方が、最新カテーテル治療の見学を目的に一宮西病院を訪れました。

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Apollo Hospital」「Sir Ganga Ram Hospital」「CardiologyFortis Escorts Heart Institute , NOIDA」「AMRI Hospital」の4病院計4名の先生方が実際に治療中のカテーテル室に入り、当院のカテーテル治療の技術や使用しているデバイスを熱心に見学されていきました。

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当院の循環器内科では、2017年は595件のカテーテル治療(PCI)を実施しており、年々その需要は伸びいてます。地域医療への貢献はもちろん、世界の医療の発展にも寄与できるよう、一宮西病院の循環器内科はどこまでも挑み続けます。

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◎当院循環器内科を見学されたインドの先生方
【Dr. Asha Mahilmaran】Senior interventional cardiologist; Apollo Hospital; Chennai, India.
【Dr.Raja Ram Mantri】Director Cardiology; Sir Ganga Ram Hospital; Delhi, India.
【Dr.Nishith Chandra】Head of Department of CardiologyFortis Escorts Heart; Institute,NOIDA; New Delhi,India.
【Dr. Sumanta Chatterjee】Consultanat Cardiologist; AMRI Hospital ; Dhakuriya,India.

中華人民共和国より2名の医師が来院、3ヶ月に渡る消化器内視鏡の研修を修了しました

今年の1月から3月にかけて、中華人民共和国寧夏回族自治区人民医院より、呼聖娟医師(Dr.Hu Shengjuan)、李西梅医師(Dr.Li Ximei)が一宮西病院へ来院し、消化器内視鏡の診断・治療の臨床研修(経鼻内視鏡、ERCP、ESD、EUS、DBE 等)を行いました。3ヶ月に渡る研修が修了し、修了証授与式が執り行われました。

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●写真左より森昭裕副院長兼内科部長、李西梅医師、呼聖娟医師、上林弘和院長。

今回の2名の医師の研修は、2013年に森昭裕医師が同医院の客員教授となったことに由来します。

内視鏡センターの紹介ページはこちら。
https://www.anzu.or.jp/ichinomiyanishi/center/endoscope/

CBCラジオ「健康のつボ~脳卒中について②~」 第4回(平成31年2月28日放送内容)

CBCラジオ「健康のつボ~脳卒中について②~」第4回(平成312月28放送内容) 
出演/つボイノリオさん(タレント)、小高直子さん(アナウンサー)、宮嵜章宏医師(一宮西病院 ストロークチーム・脳神経外科部長) 

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(小高)毎週この時間は「健康のつボ」。日本人の死因の第3位となっている『脳卒中』について専門家の先生に伺っております。ゲストは一宮西病院ストロークチーム・脳神経外科部長の宮嵜章宏先生です。よろしくお願いします。

(宮嵜)よろしくお願いします。

(小高)先週から脳卒中の中でも『脳梗塞』について色々とお話を伺っているんですが、今日はその治療法についてのお話です。「脳梗塞になった!」という場合、どんな治療があるんでしょう?

(宮嵜)脳梗塞というのは血管が詰まった病気ですから、発症早期に病院に来られた場合には血栓を溶かす薬、点滴の薬があります。この治療が行えるのが発症から大体4.5時間以内と言われていますので、症状が出てから4.5時間以内に来院された方は点滴で血栓を溶かす、ということになります。

(小高)点滴で済むならいいですね。針をちょっと刺すだけなんですから。

(つボイ)そうですね。

(宮嵜)ただ点滴だけで血栓を全て溶かせればいいんですけれど、太い血管が詰まってしまったような、より重症の脳梗塞の場合には、カテーテル血栓を取ってしまう『血栓回収療法』というものが今注目されています。『血栓回収療法』は発症してから8時間以内、さらに最近では16時間ぐらい経っていても有効な場合があるといわれています。

(つボイ)昔より適応時間が伸びたんですね。

(小高)前回、脳梗塞は症状が少し分かりにくいというお話だったので、発症に気づいて病院に行って・・・というのを4.5時間に行うのはちょっと難しいなと思いましたけれど、8時間以内、16時間以内って言われると「なんとかなるかも!」という感じがします。

(宮嵜)そうですね。ただ、そうは言っても少しでも早い方がいいです。やっぱり時間が経てば経つほど、血管が詰まって脳細胞がだんだん死んでいきますので。少しでも早い方がいいんですけれど、ただ時間が経っても”血栓を取る”という方法は全世界的に有用性が認められて、今『血栓回収療法』ができるような病院が、どんどん増えているところなんです。

(つボイ)どこでもできるわけではないんですね、今の現状では。

(宮嵜)どこの病院でも24時間いつでも出来る、というわけではないですね。

(小高)難しい治療法なんですか?

(宮嵜)血栓回収療法』というのは、いわゆるカテーテルを使って行う治療なんです。それから、脳梗塞が何時にどこで発症するかなんて分かりませんから、24時間365日いつでも対応できるという医療機関が現実にはまだまだ足りていないのは確かです。

(小高)技術そのものがすごく難しくて、できる先生が少ない・・・とかそういうのではないんですか?

(宮嵜)ではないです。『血栓回収療法』ができる先生というのは十分いると思うんですけれど、ただ医療の体制として、全ての病院で治療が24時間365日必ずできる体制にはなっていないということです。

(つボイ)そうすると、行った先の病院が脳梗塞に対応できなかったら、早く病院に行ったにも関わらず次の病院に・・・とか言っているうちに、先ほどの4.5時間・8時間・16時間が経ってしまうということもあるわけですよね。

(宮嵜)そういったことが無いよう、いま日本全国で医療体制づくりをしようとしていまして、今年からは血栓回収のストロークセンターというのを作るという動きが出ているところです。

(小高)私たちはとにかく『早く病院に行く』という努力、そして先生方や病院側は『発症から長くなっても大丈夫な新しい治療法や体制を整えていく』という努力、お互いがやっていかなきゃいけない事っていうのはちゃんとありますね。

(つボイ)やっぱり前回聞いた脳梗塞の症状に気を付けておく、ということでしょうね。

(小高)早く行けば行くほど治りも早いですし、後遺症もの主な戦なんかも ちょっと気を付けていきましょう。ありがとうございました。来週もよろしくお願いいたします。

(宮嵜)よろしくお願いいたします。

(小高)一宮西病院の宮嵜章宏先生でした。「健康のつボ~脳卒中について~」でした。

 

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CBCラジオ「健康のつボ~脳卒中について②~」 第3回(平成31年2月21日放送内容)

CBCラジオ「健康のつボ~脳卒中について②~」第3回(平成312月21放送内容) 
出演/つボイノリオさん(タレント)、小高直子さん(アナウンサー)、宮嵜章宏医師(一宮西病院 ストロークチーム・脳神経外科部長) 

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(小高)毎週この時間は「健康のつボ」です。日本人の死因の第3位となっている『脳卒中』について伺っております。ゲストは一宮西病院ストロークチーム・脳神経外科の部長、宮嵜章宏先生です。よろしくお願いします。

(宮嵜)よろしくお願いします。

(小高)先週、先々週と脳卒中の全体のお話を伺ってきましたが、今日からもうちょっと詳しく聞いていきたいと思っております。

(つボイ)いろんな話題を僕らの番組ではやるんですが、別のコーナーで前にいびきの話をしたときに、ペンネーム『ためになるやろか』さんから『今度また一宮西病院の先生が来たときに聞いてください』とメーッセージをいただきました。猛烈ないびきの件ですけれども、『いびきって周りの人に迷惑だっていうだけでは終わらん、なんか危険なものもあるんですか?』とのことです。

(小高)まず脳卒中にいびきは関係あるんですか?

(宮嵜)関係します。いびきが具体的にどういう風に出るかと言うと、気道という空気の通りが防がれることによって起こるものなんです。寝ている時、意識がない時に舌が落ち込んで空気の通り道を塞いでしまうといびきが起こります。つまり意識が障害されているような場合にいびきが出ることがあるんです。寝ている最中に脳卒中になった方で、いびきがおかしいということで気がつかれて救急搬送されたという場合があります。

(小高)よく「無呼吸症候群」でいびきが出るって言いますよね?

(宮嵜)いわゆる「睡眠時無呼吸症候群」がいびきの原因になって、日中の眠気と関係するということも言われてますが、「睡眠時無呼吸症候群」自体も脳卒中の原因にもなりうる・危険因子にもなるので、やっぱりいびきが脳卒中と関係していないとはいえないですね。

(つボイ)脳卒中になったときのいびきって、何か特徴はあるんでしょうか?

(宮嵜)普通のいびきと脳卒中のいびきが違うというわけではないです。今までそういうことはなかったのに、突然いびきをかくような場合には要注意ということになります。

(小高)すごく疲れていたらいびきが出るときもありますが、単なるいびきだと思わずに、脳卒中の可能性もあることってこと覚えておいた方がいいですね。さらに今日は、いろんな脳卒中の中でも脳梗塞について詳しくいただけますか?

(宮嵜)脳梗塞というのは脳卒中全体の中で言うと一番多くて、脳卒中の大体7割ぐらいが脳梗塞なんです。これは血管が詰まる病気で、血管が詰まってしまうと脳の障害が起こります。例えば、片方の手足の麻痺、急にろれつが回りにくくなる、言葉が喋れなくなる、歩くことができなくなる、場合によっては意識がなくなってしまう、というようなものです。

(つボイ)意識はなくなったらしょうがないでしょうけども、ろれつが回らなくなったり片方の手がおかしくなったりしたら自分で気付けますよね。

(宮嵜)そうですね。ただ実際に脳梗塞になって症状が出たとしても、心筋梗塞と違って、ものすごい痛みっていうのは少ないんです。

(小高)ここが大きな違いですね。

(宮嵜)そうなんです。なので様子見られる方が結構いらっしゃるんです。

(小高)「なんかちょっと変だな~・・・」「ん~~?」っていう感じなんですかね。

(宮嵜)そうなんですよ。本当は少しでも早く病院に来ていただきたいんですけれど、様子を見て時間が経ってから来られるという方もたくさんいらっしゃるのは事実です。

(小高)早く来て欲しいにも関わらず、自覚症状があっても“気になる”程度でおさまっちゃうんですね。

(つボイ)もっと言うならば、「我慢しよう」「日本人は我慢が大切だとだ!」とか思っている人もいるかもしれないよ。変な我慢しているとアカンですよ、ということですよね。

(宮嵜)そのような症状があった場合には、一刻も早く病院に来ていただきたい、というのがこちらの希望ですね。

(小高)さっき言った、ろれつが回らないとか片方の手足が動かなくなるとかがあったら、そんなに痛くなくても先生とこに駆け込んでみる、ということですね。

(宮嵜)突然起こることが多いですから、そういうような場合にはやはり一刻も早く受診していただきたい。

(つボイ)そもそも普段起こっていない事が起こったということは、何らかおかしいってことでしょうね。

(宮嵜)そうですね。

(小高)私たちはその症状に早く気づくことが大事なんですけれども、来週は『脳梗塞の治療法』にはどんなものがあるのかを詳しくお聞きしていきます。先生、来週もよろしくお願いいたします。

(宮嵜)よろしくお願いいたします。

(小高)一宮西病院の宮嵜章宏先生でした。「健康のつボ~脳卒中について~」でした。

 

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第11回 一宮西病院WEB公開講座 『前立腺がんのお話~早期発見で完治を目指す~』

第11回 一宮西病院WEB公開講座健康寿命をのばすために~
テーマ:前立腺がんのお話~早期発見で完治を目指す~
講 師:一宮西病院 泌尿器科部長 永田 大介 医師

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高齢化、食の欧米化により増え続ける前立腺がん

前立腺は、副腎、腎臓、精巣などと同じく泌尿器科の対象領域です。泌尿器科の疾患の中で、近年特に増えているのが、前立腺がんです。
前立腺は膀胱の下にある栗の実くらいの大きさの器官で、大きく中心領域、移行領域、辺縁領域という3つのゾーンに分類されますが、前立腺がんができるのは主に辺縁領域と呼ばれる被膜の部分です。前立腺がんと比較される疾患に、前立腺肥大症があります。前立腺がんは主に前立腺の辺縁領域(外腺)に発生するのに対し、前立腺肥大症は移行領域(内腺)が肥大する疾患です。尿道のすぐ近くにでき、尿道や膀胱を圧迫するため、尿が出にくい、尿の切れが悪いなどの症状が出現します。
前立腺がんは、初期段階ではほとんど自覚症状はありませんが、進行すると辺縁領域から尿道の方へ大きくなり、前立腺肥大症と同じような症状が現れるようになります。また骨やリンパ節へ転移することが多く、腰痛や背部痛などにより整形外科を受診した際にレントゲンを撮影し、影が見つかるというケースもあります。
前立腺がんの大きな特徴は、若年層の罹患率が極めて低いという点です。40代後半、主には50代以降から年齢を重ねるごとに患者数が増加します。2014年の統計によると、男性の部位別がん罹患数で前立線がんは4位。2020年には1位になるのではないかと予測されています。前立腺がん増加の背景としては高齢化、食生活の欧米化に加え、診断技術の進歩が挙げられます。診断技術が向上したことにより、早期のがんが発見されやすくなったのです。
罹患数の多い前立腺がんですが、死亡率は他部位のがんに比べて低いという統計が出ています。がんと診断された後、5年後の生存率を比較すると、治りにくいがんと言われるすい臓がんが7・9%であるのに対し、前立腺がんは97・5%。つまり、多くの方が罹患する危険性があるものの、早期に発見すれば非常に治癒しやすく、命を落とす恐れが少ないがんと言えるでしょう。

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PSA値の高さに比例して前立腺がんのリスクも上昇

前立腺がんを発見するための検査、診断の流れとしては、大きくスクリーニング検査、確定診断、病期診断というステップがあります。スクリーニング検査には、PSA検査と呼ばれる血液検査、経直腸的超音波(エコー)検査、MRIによる画像診断などがあります。中でも市民検診や企業検診、人間ドックなどで行われる一般的な検査がPSA検査です。PSA前立腺の特異なタンパク質の一種で、少量ずつ血液に流れ出ますが、PSA値が増えるほど前立腺がんの疑いが高まります。前立腺がんの重要な危険因子が年齢であるという点から、50歳を過ぎたらPSA検査をすることが推奨されています。
スクリーニング検査でがんの疑いがみられた場合、前立腺生検によって確定診断を行います。これは前立腺に針を刺して組織を採取し、がん細胞の有無や悪性度などを調べる検査です。
次に行うのが病期診断です。がんの転移や進行度を調べ、Ⅰ期からⅣ期、ステージAからステージDなどに分類します。治療法を選択する際の重要な情報源となります。CTやMRIなどによる画像診断の他、全身の骨を1枚のレントゲンに映し出し、骨への転移を調べる骨シンチグラフィーという検査も有効です。前立腺がんの転移先はおよそ85%が骨、38%がリンパ節で、比率的には低いものの、肺や肝臓に転移することもあります。前立腺がんの細胞は血液の流れにのって運ばれ、骨で栄養を吸収しながら悪性のがんへと成長し、肺や肝臓に転移していくため、骨転移への対処が鍵を握る病気なのです。

低侵襲の腹腔鏡下手術やホルモン療法などで治療

病期分類の結果を基に、治療へと進みます。基本的にⅠ期やⅡ期の中で、悪性度が低い限局性がんの場合は監視療法が中心です。PSA検査を3~6カ月に一度行い、値が上昇しない間は特に治療は行いません。
悪性度が高い場合や前立腺被膜外にがんが広がっている段階では、手術による外科治療、放射線治療、ホルモン療法などが選択肢になります。前立腺がんの手術では開腹手術に加え、体への負担が少ない腹腔鏡下手術が普及。腹腔鏡下手術は術後の痛みが軽度で、術後10日程度を目安に退院が可能になるため、早く社会復帰ができるなど多くの利点があります。またロボット支援法の導入など、技術革新も進んでいます。放射線療法では粒子線、光子線などの外部放射線療法、内部放射線療法の他、IMRT(強度変調放射線治療)という新しい照射方法も登場。腫瘍の形に応じて放射線が照射されるので、周囲の正常な組織への影響が少なく、副作用を抑えることができます。ホルモン療法は、他の治療法と併用されるケースも多く、前立腺がんは発生から増殖、成長にいたるまで男性ホルモンに依存するため、薬の服用や注射によって男性ホルモンを抑えることで、がんを餓死させていきます。
さらにリンパ節などへの転移が見られるケースでは、抗がん剤による化学療法も選択肢になります。

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予防の鍵は健康的な生活 定期的な検査で早期発見を

前立腺がんの予防策としては、質・量共に良い睡眠をとる、揚げ物をできるだけ食べない、禁煙、ストレスをためない、お酒は適量を心掛ける、適度な運動など、健康的な生活を送ることが大前提。その他に前立腺がんの特性に応じた対策として、大豆製品(イソフラボン)やトマト(リコピン)を積極的に摂取する、排尿時の違和感を見逃さないようにするという点にも留意が必要です。
さらに自覚症状がない前立腺がんにとって重要なことは、定期的にPSA検査を受けることです。早期発見をすることで治療の選択肢が広がり、治癒できる確率が格段に高まります。50歳を過ぎたら、ぜひ定期的にPSA検査を受診しましょう。

◎一宮西病院 泌尿器科WEBサイトはこちら。
https://www.anzu.or.jp/ichinomiyanishi/surgery/urinary/

◎特集インタビュー「早期発見で治療の幅が広がる! 前立腺がん6つのポイント」はこちら。
https://www.anzu.or.jp/ichinomiyanishi/special/special_interview/12/

◎永田大介医師紹介ムービー(関連記事)はこちら。